なぜ電気自動車のバッテリーは高額なのか?
「どうして電気自動車のバッテリーは高いんですか?」とよく聞かれますが、その答えは単純で、バッテリーの中身が他とは違うからです。電気自動車は、ノートパソコンやスマートフォンと同じリチウムイオン二次電池を使用していますが、しかしながら、その電池の大きさが桁違いなのです。より多くのエネルギーを電気自動車に供給するために、バッテリーの中に大きな電池が密集しているのです。例えるなら、大きめのカバンほどあります。
電気自動車の電池の正極は、電気を蓄えたり放出したりする2つの電極のうちの1つで、電池セルの中で最も高価な部品です。正極には、コバルト、ニッケル、リチウム、マンガンなどの金属が頻繁に使用され、より多くのエネルギーを詰め込むことができます。それらは、採掘、加工、あるいは少し高めの化合物に変換できます。
大体いくらかかる?
現在のレートとパックサイズでみると、一般的なEVの平均バッテリーコストは約6,300ドルです。BloombergNEFによると、バッテリーパックの価格は、過去10年間で89%低下しているそうです。実際、2010年時点では、11kWhあたり業界平均1,191ドル超でしたが、昨年には1kWhあたり業界平均137ドルに急落しています。そうとはいえ、内燃機関搭載車と同等のコストとなるべきであり、その基準値である100ドルを依然として超えています。今後、バッテリーコストがこれほど急速に低下することはないでしょうし、原材料費の上昇も助けにはなっていません。しかし、BNEFの予測では、リチウムイオンパックのバッテリーコストは2024年には1kWhあたり92ドル、2030年には58ドルに下がるとされています。
どのように価格を抑えられる?
メーカー各社が最も注目しているのは、最も高価な商品、特にコバルトです。このコバルトを、より安価でエネルギー貯蔵量が多いニッケルに置き換えることも検討されています。ところが、コバルトは熱に弱く、発火しにくいので、安全面には細心の注意が必要でしょう。また、コバルトを一切使用しない代替品も考えられています。一例としては、お手頃な価格のリン酸鉄リチウム電池です。リン酸鉄リチウム電池は、性能の悪さが指摘されていましたが、設計の見直しで改善されつつあり、低価格の代替品として再び注目を集めつつあります。また、電池パックの設計を簡素化し、各車種に特化したパックではなく、類似した製品を複数の車種に採用することで、さらなるコスト削減を実現することが可能でしょう。
大手電池メーカーはどこ?
リチウムイオン電池の生産は、アジアが圧倒的に多く、世界生産量の80%以上を占めています。2020年の出荷量が最も多かったのは、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)であり、市場全体の4分の1以上を占めました。今年9月には、同社はそのシェアを30%にまで拡大し、韓国のLGエナジーソリューション社、日本のパナソニック株式会社がその後に続いています。ちなみに、テスラとパナソニックの合弁会社は、米国最大の電池メーカーであり、また、テスラの元社員が設立したスウェーデンのノースボルトと、中国の国軒高科は、両社ともスタートアップの電池メーカーです。
中国製が一番いい?
この答えはイエスです。あらゆる面において中国製の電池は優れています。実際のところ、金属そのものはオーストラリア、コンゴ民主共和国、チリで採掘されていますが、リチウムやコバルトなどの原材料を電池の化学物質に変える化学精製の80%以上を中国が担っているのです。また、BNEFの統計によると、電池に欠かせない重要な4つの部品(正極、負極、電解質溶液、セパレーター)の各委託生産量は、世界の半分以上を中国が占めているとのことです。ただし中国は、高度な半導体設計やソフトウェアといった課題を抱えており、これらは今後自動車が知能化するにつれてますます不可欠となっていくでしょう。